2023~2024年度 国際プロジェクトチーム企画
国際プロジェクトチーム(国際PT)は2018年6月、日本国内のボランティア活動や支援団体について、国際的活動に関わりの深い団体を中心に発足しました。7月26日の最初の会議より、すでに甚大な自然災害で被災した在留外国人への支援課題についての発言がなされていました。2018年度の活動として、国際PTは被災者支援団体に在留外国人の支援の現状と課題についてヒアリングを実施し報告書を作成しました。
また2020年のコロナ禍で、地域に外国ルーツの人々が生活者として存在していることが意識化されました。そこで、国際PTは在留外国人を支援している団体にオンラインでヒアリングし、報告書を作成しました。これらの調査の中で、非常時において地域住民に必要な情報や支援を提供したり、地域福祉推進のコアとして活動する地域の社会福祉協議会(以下、社協)に、外国ルーツの住民が地域に多く住んでいるという事実を意識化させることの重要性が示唆されました。
これらのヒアリング報告書を受け、「ボランティア全国フォーラム2022」2日目の分科会が企画され、2022年11月19日、全国社会福祉協議会会議室で開催された第1分科会「多文化共生を考える~地域の支援者として活動する外国ルーツの人々を、支える」が開催されました。分科会では、外国ルーツの人々や団体が、地域で暮らしていくなかで、「支援を受ける立場」から「支援をする側」としてボランタリーに活動する実践について、実践家による報告がなされました。分科会では、活動のきっかけ、活動を進める上での地域社会との軋轢(あつれき)や葛藤の克服、現状や課題と可能性について3人の実践家が報告し、多文化共生推進のためにボランティア・市民活動にできることが議論されました(※1)。
これらの活動を通じ、国際PTの議論の中で、改めて「『多文化共生』とは何か?」という疑問が提起され、2023年度国際PT連続勉強会「いまさら聞けない地域de多文化共生」の企画が始まりました。折しも、2024年に「広がれボランティアの輪連絡会議」が30周年を迎えるということもあり、プレイベントも兼ねて、連続勉強会キックオフ企画「多文化共生の地域づくりに向け「私たち」ができることを考える」が2023年6月16日に開催されました。
※1…実践報告者は以下の3人である。いずれも登壇当時の肩書きである。横田能洋氏(茨城県/認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ代表理事)、石川美絵子氏(東京都/社会福祉法人日本国際社会事業団常務理事)、松井リリアン氏(神奈川県/社会福祉法人横浜YMCA福祉会 認定こども園YMCAいずみ保育園保育士)、コメンテーターは上野谷加代子氏(「広がれボランティアの輪」連絡会議会長/中央共同募金会外国にルーツがある人々への支援活動応援助成審査委員長)。
外国ルーツを持つ人々は、日本で暮らしていくうえで様々な社会的な障壁に直面しています。具体的には、言語や文化の違いによる差別や偏見、就労や教育機会の不平等、福祉や保健医療にアクセスすることの難しさなど多岐にわたっています。そのため、「私たち」の課題である「多文化共生」分野に対し、「自分ごと」として理解を深め、協働していく必要があります。連続勉強会を通し、とりわけ社会福祉やボランティア・市民活動に関わる人たちが、地域で暮らす外国ルーツの住民が置かれている状況を知ることで、自分たちの地域では何ができるのかを考えることをめざします。開催頻度は2〜3ヶ月に1回のペースで実施します。
連続勉強会のプログラムイメージは以下のとおりです。開催方法はオンライン(zoom)で1時間半から2時間の構成です。
1) 講師・登壇者による実践・体験の紹介(40−60分)
登壇者による日々の活動の内容、「多文化共生」に関わった経緯や思い、課題意識の紹介。国際PTメンバーがコーディネーターとして対談形式で実施したこともありました。
2) 質疑応答(30分)
3) グループワーク(30分)
実践報告の内容を踏まえて、参加者がグループに分かれ、少人数で議論。参加者がそれぞれの地域で多文化共生を進めるために何ができるのかを考えます。
【日 時】2023年6月16日(金)15時45分~17時15分
【参加方法】オンライン(Zoom)
【講 師】石河久美子氏(日本福祉大学名誉教授)「地域における福祉と多文化共生―連携の必要性―」
【概 要】勉強会のキックオフ企画として、まずは多文化共生の地域づくりにおける過去・現在の課題を知ることを通して、日本社会のマジョリティである「私たち」ができることを考える一歩を踏み出した。
【日 時】2023年7月19日(水)15時00分~16時30分
【参加方法】オンライン(Zoom)
【講 師】高橋良子オザナ氏(小山町みんなの食堂代表)、聞き手:山根一毅氏(国際PTメンバー、大阪YMCA)
【概 要】子どもたちが一人でも安心できる居場所、みんなで食事ができる場所である「子ども食堂」の取り組みが全国に広がっている。講師はブラジルと日本のルーツを持ち、11歳の時、家族で来日した。日本の学校に編入した当初、日本語ができないことで辛い経験もした。現在、小山町で「みんなの食堂」を主宰し、地域の社協とも連携しながら地域おこしに貢献している。多文化共生は、外国人が日本社会で生活できるように支えることだけではないはずである。外国にルーツのある女性たちで地域おこしに貢献している講師のお話を通じ、新しい地域住民と社協との連携の可能性について考えた。
【日 時】2024年11月23日(木)14時00分~16時30分
【会 場】全国社会福祉協議会5階会議室 ※2023年度ボランティア全国フォーラム分科会3
【講 師】宮坂 誠氏(豊島区社協 共生社会課CSW担当チーフ)、村松 清玄氏(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 地球市民事業課)、内藤 博幸氏(大田区社協 地域福祉推進課 おおた地域共生ボランティアセンター 地域共生担当主任)、石井 さわ子氏(一般社団法人レガートおおた代表理事)、勝部 麗子氏(豊中市社協事務局長)、吉見 知美氏(豊中市社協)、山野上 隆史さん(公益財団法人とよなか国際交流協会 理事兼事務局長)
【概 要】国際交流に力を入れているNPO/NGOや国際交流協会等と連携して事業を行っている社協の担当者から事例をご発表いただき、自分たちの地域で何ができるかを考えた。
【日 時】2024年3月26日(火)15時00分~17時00分
【参加方法】オンライン(Zoom)
【講 師】武周氏(成城大学)、G.Cプラサムサ氏(帝京科学大学)、聞き手:伊藤章氏(「広がれボランティアの輪」連絡会議国際PTメンバー・JAVE)
【概 要】日本在留の外国人は2023年6月時点で320万人を超えて過去最多となり、日本国内で育つ外国にルーツを持つ子どもたちも今後増加傾向にある。外国ルーツの子ども向けの教育・学習の機会は昔に比べて増えてはいるものの、まだ十分とは言えない。そこで、勉強会では「多文化フリースクールちば」、「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」で活動したり、支援を受けたりした経験を持つゲストに登壇していただき、自身のライフストーリーや活動内容をお話しいただいた。外国ルーツの子どもたちは多様な文化的バックグラウンドや経験を持った、地域のまさに「人財」である。彼らが自らの持つ可能性や能力を十分に発揮できるような社会を作っていくために自分たちに何ができるかについて考えた。
【日 時】2024年10月22日(金)15時00分~16時30分
【参加方法】オンライン(Zoom)
【講 師】原めぐみさん(Minamiこども教室 実行委員長)
【概 要】大阪市中央区で外国にルーツをもつ子どもたちの学習支援に取り組む「Minamiこども教室」の取り組みや活動への想い等を共有し、日本に暮らす私たちが多文化共生に向けて何をどのように取り組んでいけるのかを考えた。
【日 時】2025年1月15日(水)16時00分~17時30分
【参加方法】オンライン(Zoom)
【講 師】堀内誠人氏(出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室)
【概 要】日本で暮らす外国ルーツの人が増加しているが、受け入れる日本の地域コミュニティ側にはいまだ課題がある。外国ルーツの人と共生していく際の課題がどこにあるのか? 私たちは共生のために何ができるのか? これらを考える手がかりとして、出入国在留管理庁から講師に迎え、外国人との共生社会の実現に向けた取り組みの現状や制度の基礎知識、ボランティアや市民セクターに期待することを伺った。